インターネットの映画レビュー・サイトが充実したおかげで、プロ顔負けの批評が全国から続々と登場するようになり(逆に見てない映画を見たふりして揶揄するなどの冷やかし的な困った状況もあるにはある)、映画評論家なるものの存在があやふやになって久しい昨今ではあるが、少なくとも20世紀には映画ファンがリスペクトするに足る映画評論家が確実に存在していた。 その筆頭として挙げられるのが、淀川長治氏である。リアルタイムで接したことのない今の若い世代も「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」の名台詞を発した“サヨナラおじさん”としての彼の存在ならばうっすらと認識できるのではないだろうか。 これは昭和から平成にかけてのTV映画劇場「日曜洋画劇場」の名物解説者として、およそ32年もの間続けた淀川さんが、番組の最後に視聴者へ毎週贈った言葉であり、当時の映画ファンはこれを聞きながら古今東西の映画の魅力を反芻させていったもので