(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト) 今回の北京冬季オリンピックはそれほど楽しみにしていたわけではなかった。いうことがなにひとつ信用できない中国共産党主催ということもあるが、IOCの拝金主義とやり口の汚さがわかるにしたがって、昔みたいに無邪気に楽しめなくなったのである。 昨夏の東京オリンピックのときからそうだった。スポーツ業界のうさんくささや、マスコミに煽られた「金メダル」幻想に乗ってはしゃぐ一部の選手たちにも嫌気がさした。 それでも、あるひとつの価値のために、10年も20年も過酷で地味な努力を自分に課して精進している選手には敬意を払ってきた。世の中で認められている価値の上に、いわば剣術修行者のように、自分個人の人間的成長と技量の進化という価値を重ね合わせたひとたちである。今度の大会でいえば、わたしが注目したのは、スピードスケートの小平奈緒選手と高木美帆選手であり、ノルディック複合の渡部暁