畠山和洋から、突然の電話 「まさかさ、電話なんてかかってくるとは思わないじゃない……」 そこまで言うと、次の言葉を探すように少しだけ間をおいて猿渡寛茂さんは続けた。 「……最後に電話があったのは、もう十数年も前のことだからさ。そのときは、“結婚します”っていう連絡だったよ。でも、オレの番号は誰かに聞いたのかな? それとも、登録してあったのかな? オレの携帯にはアイツの番号は登録していなかったよ。だから、最初は誰からの電話かわからなかった。でも、声を聞いてすぐにアイツだってわかったよ。嬉しかったよね……」 猿渡さんの言う「アイツ」とは、今季限りで現役を引退した畠山和洋のことだった。かつて、彼と畠山は師弟関係にあった。いや、ここ最近はお互いに緊密な連絡こそなかったものの、それでも現在に至るまで両者の師弟関係は続いていた。そうでなければ、十数年ぶりに電話がかかってくるはずがない。 「……久しぶり