「戦争は富める者をいっそう富ませ、貧しき者をより貧しく、唯一の資本たる健康な肉体さえ損なわしめた。金欲亡者がぶくぶく肥り、我が世の春を謳歌する蔭、祖国のために義務を尽した勇士らが、路傍で痩せこけ朽ちてゆく。諸君! こんな不条理が許されていいのか! 人道を無視した搾取に対して、我々は一致団結し、抗議の声を上げねばならない!」 その日、グロブナー・スクウェアは熱かった。 ロンドン有数の高級住宅街に設えられたこの公園を舞台とし、社会主義者どもの野外演説会が決行されたからである。 緑の空間に、アカどもが蝟集したわけだ。 (トラファルガー広場のコミュニストたち) アジに盛り込まれている「戦争」の二文字。これはつまり、第一次世界大戦を指す。 ヴェルサイユ条約締結からそう幾許(いくばく)も経ていない時分のことだった。 むろん、この批難には突っ込みどころが山とある。 一九一四年八月四日、イギリスによる対独