僕は思わずくしゃみをした原稿に行き詰まってしまった。いつものことだ。そばに話す相手もいないので、外に出て深呼吸をひとつ。雲ひとつない澄み切った濃紺の夜空を見上げる。東の低い位置にオリオン座が見える。数万年後に超新星爆発を起こして、その一生を終えるといわれているベテルギウスがなんだかたまらなくいとおしい。この星がなくなったら、オリオン座だけでなく、冬の大三角形も崩壊し、冬の夜空は画竜点睛(がりょうてんせい)を欠くことになる。 体が冷えてくしゃみが出た。スペイン人の友人がそばにいたなら、間違いなく「ヘスス!」と声をかけてくれるはずだが、その代わりに谷川俊太郎さん=写真右=が18歳のときに書いた詩「二十億光年の孤独」の最後の一節を自分で口にした。 《二十億光年の孤独に/僕は思わずくしゃみをした》 「広場の孤独」は嫌だけれど、「二十億光年の孤独」は不思議にとてもすがすがしい。そしてもうひとつ、同じ
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