RENZABUROスペシャルインタビュー! 最新作『九つの、物語』に寄せて――著者・橋本紡さんが、いま伝えたいこと。 (1)「これまでの作品をやすやすと超える、自信作になりました。」 『九つの、物語』というタイトルからもわかるように、本作は、大学生・ゆきなを主人公にした9編からなる物語。それぞれの章に、太宰治や田山花袋、樋口一葉などの文学作品が登場し、ゆきながそれらを読んで、時に主人公の気持ちと自分の気持ちを重ね合わせたり、あるいは何かヒントを得たりして、物語が動いていく。 ――最初に浮かんだのが、人があまり入ったことのない、本がたくさんある部屋で、主人公・ゆきなが本を読んでいるというシーンでした。そのシーンを基点にして、なぜそんなことになっているのか、本当は誰の部屋なのか……と考えていく中で出てきたのが、ゆきなの兄・禎文です。禎文の登場は偶然であり、奇跡でした。決して意図したものではない