あんまり机上で妄想ばかりしているのも身体に悪いと主治医から言われたので、登美彦氏は本屋大賞の授賞式へ出かけることにした。 登美彦氏の目的は以下の二点である。 一、万城目学氏を「ちょっと手加減して」殴ること 二、美味しいものを食べること 東京駅から編集者の小囃子氏と一緒に歩いていくと、明治記念館というたいそう立派な建物がたっていた。 中へずんずん入って受付へ行くと、図書カードがもらえたので、登美彦氏は私腹を肥やした。 授賞式の会場は大勢の人でごった返している。テレビカメラなどもならんでいて、たいへんな大騒ぎである。登美彦氏はその間をすり抜けて、「本屋大賞ノミネートの人々」が集まる席へ向かった。 その途中で万城目学氏が立っていたので、ちょっと手加減して殴った。 万城目学氏は「思いのほか痛い」と呻いた。それから「あとでサインを頂戴致したく」と言った。 登美彦氏はそのままお喋りもせずに去る。 登美