“ほんのそこまでのつもりでいたのに ― 気ずいた時には 見知らぬ国 ― はるか地の果て さすらってたのに ― ふと立ち止まれば いつものここ”(1.『アベマリーア!』より/動画はこちら) 10代の頃から20年以上も日本全国を放浪し、沖縄で2年ほど野宿生活をした時期もあった。ボサノヴァにのめり込んでは実際にブラジルまで出向き、サントゥールという打楽器に惚れてインドへも訪れた。 タクシーサウダージの1stアルバム『Ja-Bossa』は、そんな彼の人生の軌跡を思いおこさせるような『アベマリーア!』の上記の歌詞から始まる。「60歳にしてデビュー」と聞くと色物のような印象を持つ人もいるかもしれないが、その年輪を感じさせるように太く低く、かつ透き通るような歌声と、生々流転の儚さを歌うような歌詞に触れれば、“これは本物だ”と誰もが気づくだろう。 「ギターを弾き始めたのは高校生の頃で、3カ月くらいで作詞作