辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 前回、「悩ましい」は問題の多い語だと書いたが、「悩ましい問題」という表現に違和感を持った方も大勢いらっしゃったのではないだろうか。本来この語は「官能が刺激されて心が乱れる思いである」という意味で使われることが多かったのだが、近年になって「どうしたらいいのか悩んでいる状態である」という意味が生じているのである。 文化庁が平成14(2002)年1月に行なった「国語に関する世論調査」でこの語の実態を調査している。それは、「a 悩ましい目つきで誘惑する」「b AかBかの選択は悩ましい問題だ」の言い方について、どちらを使うかという調査内容であった。結果は、aだけが39.1%、bだけが22.4%、abどちらもが9.1%というものであった。 各社の国語辞典を引いてみると、
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