1997年、ドイツ。日本人として始めて世界最高峰の卓球プロリーグに挑戦していた松下浩二はふと思った。「自分は何をしているのだろう」。アパート探しからチケット手配まで練習の合間を縫ってこなしているのに、周りの選手たちは代理人にそれらを任せて、試合に集中している。華々しい日本の生活を捨てて、世界と戦うために海を渡った松下は、肝心のプレーではなくマネジメントで苦しんでいた。(北村慶一・慶應義塾大学) ◆勝てば天国、負ければ地獄 現役時代の松下浩二(チームマツシタ提供) 20年前、大学卒業を前にして卓球留学した。プロリーグに参戦するためスウェーデンに渡った。「強くなりたいというより、見聞を広める狙いだった」が、そこで松下は考えを根本的に変えざるをえなくなる。 当時のスウェーデン代表は世界チャンピオン。リーグには自分より格上の選手がたくさんいた。 「勝者は観客から称賛されるが、負けた自分には見向きも