高圧洗浄機を3万円で買い、家の外壁を丹念に洗い流した。東京電力福島第1原発の事故で飛散したセシウムなどの放射性物質の問題は今でも続いている。原発から北西へ約60キロ離れた福島市渡利地区に住む飲食店経営、川井一弘さん(42)は一家4人で暮らす自宅を自ら除染した。 「行政による除染の順番なんか待っていられなかった。自分の家族は自分で守ろうと思った」 小学1年の晴(はる)君(7)をはじめ2人の子供がいる。昨年9月のある日、晴君が窓の外を眺めながらつぶやいた。「外で遊びたいけど、放射能あるからだめだよね」。少しでも体を動かせるようにと、リモコンを使って運動のできる家庭用ゲーム機を買い与えることしかできなかった。 川井さんは高圧洗浄機購入のほか、庭の土の入れ替えを30万円かけて民間業者に依頼。除染の結果、毎時2~3マイクロシーベルトあった放射線量は10分の1程度まで下がったが、親としての判断に不安は