前人未到の、そして誰もが期待したヒューゴー賞長編小説部門三連覇に、会場の盛り上がりは最高潮に達する。登壇したジェミシンは、スマホを片手に「ちょっと待って、友達からメールが来すぎてスピーチのメモが…」とおどけて見せ、会場を笑わせた。そんなお茶目な彼女だが、ここまでどのような道のりを経て、現代を代表するSF作家にのし上がったのだろうか。今回は、N・K・ジェミシンの実像に迫ろう。 大学時代の意外な専攻 N・K・ジェミシンは、1972年生まれのアフリカ系アメリカ人。アイオワ州で生まれ、ニューヨークとアラバマで育った。テュレーン大学では心理学を専攻しており、デビュー後も執筆業に勤しむ傍、キャリアカウンセラーとしての仕事をこなしている。なお、テュレーン大学は「隠れた名門大学」として知られており、オバマ大統領時代の米国公衆衛生局長官であったレジーナ・ベンジャミンや、第12代米国環境保護庁長官のリサ・P・