前回の記事で赤穂浪士の吉良邸討ち入りも、吉良上野介が大悪人でなければただの殺人行為となってしまって物語が成り立たないことを書いた。 この討ち入りについて「主君の仇討ち」という言葉がよく使われるのだが、松の廊下では浅野内匠頭の方が吉良上野介を殺そうとして斬りつけたのであって、吉良が浅野を殺そうとしたのではない。普通に考えれば、浅野の家臣である赤穂四十七士が吉良邸に討ち入りすることを「仇討」というのはどこかおかしい。 そもそも浅野内匠頭が吉良上野介を斬りつけた理由がよくわからない。『忠臣蔵』の物語には吉良がひどく浅野を苛めたことがいろいろ創作されて書かれているのだが、当時の記録からはそれらしき理由が見えてこないのだ。そして肝心の赤穂浪士もその理由がよくわかっていなかったとしか思えない。 刃傷事件の当日の浅野内匠頭に関する記事は、現場にいて後ろから浅野を羽交い絞めにして取り押さえた梶川与惣兵衛頼