小学生の頃だったと思うが、「稲むらの火」という物語を読んだ。 この物語のあらすじは、概ね次のようなものである。 五兵衛という人物が激しい地震の後の潮の動きを見て津波を確信し、高台にあった自宅から松明を片手に飛び出し、自分の田にある刈り取ったばかりの稲の束(稲むら)に次々に火を着けはじめた。 稲むらの火は天を焦がし、山寺ではこの火を見て早鐘をつきだして、海の近くにいた村人たちが、火を消そうとして高台に集まって来た。 そこに津波がやってきて、村の家々を瞬く間に飲み込み、村人たちは五兵衛の着けた「稲むらの火」によって助けられたことを知った、という物語である。 この物語は、ラフカディオ・ハーンが書いた「A Living God」という作品を読んで感激した和歌山の小学校教員・中井常蔵氏が児童向けに翻訳・再構成したものだが、わが国では昭和12年から昭和22年までの国定教科書に掲載されていたほか、アメリ