昔、10歳ぐらいまでか、自分は天才だと思っていた。結果として勘違いもいいところだったのだが、当時は僕のアイデンティティーであった。ろくに勉強しなくてもテストで点が取れるし、誰よりも手先が器用だった。やろうと思えばなんでも出来た。他人より自分が優れていることが嬉しくて、他人がやっていることを真似して、それを本人の前で超えてやろうと息巻いたりしていた。覚えている限り、僕はそれを容易に達成していた気がする。よく言えば向上心豊かな子だったのだが、その原動力は薄汚れていて俗悪だった。 僕は周囲に馴染めなかった。その理由を自分の家庭環境に求めた。確かに僕の家庭環境は異常であり、なにやらわからぬ妙な宗教団体に入り浸っていたり、両親はほとんど家におらず孤独にすごしていたりした。母は病気で入院していて、親父は仕事に忙殺されていた。親父と祖父は宗教の問題で揉めていた。僕は対象年齢が高いテレビゲームばかりしてい