朝の準備をするアジャイ 「不完全な女って呼ばれるの」 西アフリカのシエラレオネで出会った18歳のアジャイからこの言葉を聞いたのは、2018年の雨季が始まる頃だった。赤いスポーティーなTシャツを着て、それまでハツラツとした口調だった彼女が、その時は声を落としてそう言った。それは「伝統」という名の下に、女性の体を傷つける行為と深く関係していた。 シエラレオネでは10人中9人の女性がFemale Genital Mutilation(女性器切除、以下FGM)を経験している。FGMとは、多くの場合15歳までの間に、伝統として女性器の一部を切除したり縫合したりすることをさす。現在でも、アフリカや中東だけではなく、アジアなど世界30カ国で少なくとも2億人の女性が、医学的な根拠もなく受けているといわれる(ユニセフの報告書「女性性器切除:世界的な懸念」2016年)。 FGMは、主に女性の貞操を守ることを目
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