筆者は、「専業主婦は経済的に損をする」ことが各研究より明らかにされているものの、それでも日本では専業主婦が支持される理由に、金銭では測定しきれない幸せの尺度があることが見え隠れすると述べている。確かに、幸せは個人の主観に過ぎない。中には、貧困・低収入ながらも高い幸福感を得ている専業主婦もいる。子育てと夫婦関係が比較的良好であると低収入ながらも幸福度が高いというデータもある。ただし、自分が「幸福」と感じているものの、客観的にみるとむしろ「不幸」、相対的貧困とも言える状態にいる貧困専業主婦は少なくない。 本書では、「貧困専業主婦」を一つの「社会現象」と捉え、「貧困の罠」、「制度的罠(配偶者控除、社会保障制度、配偶者手当など)」が意図せずに専業主婦コースへと誘導する効果があるとしている。働く希望を持つ貧困専業主婦の労働を阻害している「社会的な障壁」が確かに存在し、「貧困なのに専業主婦」というジレ