もう30年以上も前の話。医学生として、精神科の講義をうけていた。テーマは精神分裂病、いまでいう統合失調症である。先生の話す内容が支離滅裂でまったくわからない。いつもは階段教室の中腹に座るのを常にしていたのであるが、その日は最後列・出入り口近くのアホ捨て山(© 久坂部羊)に陣取っていた。 隣の席にいた年かさの同級生に、まったくわからん、と話しかけたら、物知り顔に教えてくれた。”仲野、あほかおまえは。まだ説明されてないけど、これは分裂病の患者さんなんや。最後に教授が出てきて、典型的な分裂病の患者さんはこういった話をします、っていうて終わるんや”と。 なるほど、それなら仕方あるまいと、おとなしく最後まで聞いていた。しかし、誰もやってこなかった。やっぱり講義だったのだ。難しすぎる、と、その日を限りに、精神科の勉強はあっさりあきらめた。そんなであるから、精神科の知識は素人に毛が生えた、それも私の髪の