あまりに奇妙なことが多すぎて、奇妙でないモノの方が少ない。 とても秋とはいえず、雪が降らないギリギリの寒さの日であった。 十歳になる一人の髪の長い少女が、刈り入れの済んだ田んぼで舞っていた。これは奇妙とはいえ、有り得ない話ではない。 少女の名は環(たまき)。 彼女が身につけるデニム地の短パンは、裾に防寒用の毛皮が付いている。寒いのならそもそも短パンを選ぶ必要がない。これは少しばかり奇妙だ。 上に着ているのは革製のフライトジャケット、前を空けているので舞に合わせて赤いシャツと裏地の毛皮が見える。その毛皮は襟の部分も覆っている。 このジャケットはとてつもなく奇妙だった。 表の革と、防寒用の裏地は別の物で、裏地は兎の毛皮だ。 色は白。兎の小さな毛皮なので、当然、何羽分かを縫い合わせていて、同じ白でも微妙に色合いが異なっている。 白は白でも、その白は純白ではない。薄く黒い縞模様が兎の毛皮に浮かんで