1989年5月28日。 宿沢広朗率いる日本とスコットランドの試合が秩父宮で行われる日だった。 まだ大学4年生だった私は、前日に野球の早慶戦の観戦があり(現・早大野球部監督の小宮山悟氏が先発だったはず)、夜に少しばかり飲みすぎていた。あまり体調がよくない。それでも友人がこう言った。 「行ったほうがいいよ。なにかあるかもしれないから」 そして、本当に「なにか」が起きた。 28-24。 トライ数は5対1の完勝、ラグビー日本代表が、ホームユニオンに勝つだなんて……。あの日の感動は筆舌に尽くしがたい。 監督だった宿沢広朗さんは、一躍、時の人となった。秩父宮でのスコットランドの非公開練習を、隣接する伊藤忠商事のビルからこっそりと偵察していた話など、聞いているだけでワクワクした。 メンバー表を見ても懐かしい。ロックは林敏之、大八木淳史の同志社→神戸製鋼コンビ。ナンバー8にはトンガからやってきたシナリ・ラ