サマリー 電子化された医療情報の利活用によって不利益を被りたくない、という患者の当然の期待に応える一方、新たな治療法の発見、医療の質の向上、医療の効率化、エビデンスに基づいた研究開発、そして医療政策決定への応用という大きな利益を国民が享受できるようにするためには、少なくとも個人情報の保護に関する法律等の関係する法律に基づいて、必要十分な匿名化の方法と同意取得の手続きを早急に確立する必要がある。 1.はじめに 医療情報の利活用は、世界的に注目を集めている課題である。例えば、米国では患者本人の利益のために医療IT化戦略と電子診療情報(クリニカルデータ)の利活用が進められている。最近、米国では医療保険制度改革の法案が連邦議会で可決成立し、より多くの国民に医療へのアクセスが拡大されることになった。そして、関連法案である米国再生・再投資法(American Recovery and Reinvest