まずは、女の性欲についておそらく、後代の歴史家は、二十世紀末の日本を振り返って、こう記するにちがいない。「二十世紀末の性革命は、六〇年代のそれとは異なり、女による、女のための、女の性欲の肯定を特徴とした」と。 事実、書店の性愛関係の書物を一瞥すると、男による男のための男の性欲に奉仕する従来型の本のほかに、「女による、女のための、女の性欲」を扱った本が目につく。進行中の第二次性革命は自らのドキュマンを必要とする段階に達したようだ。 この手の「女の性欲」肯定本は、共通した特徴をもっている。それは男女の性器を剥き出しの卑語で即物的に語ることだ。斎藤綾子の短編集『フォーチュンクッキー』(幻冬舎一四〇〇円/幻冬舎文庫四九五円)はその典型だ。 どんなに素晴らしいチンコをもっていても、持ち主がチンコに胡座をかいていたり、宝の持ち腐れで性に意欲がなかったりすれば、セックスはたちどころにつまらないものになっ