(本稿はM-1グランプリ2021のあからさまなネタバレを含みます。) 1.人生そのものの漫才 M-1グランプリ2021は錦鯉が優勝した。優勝を決めた猿捕獲のネタには笑い転げた。 長谷川氏が猿よりバカな言動をするというひたすらバカバカしい漫才でありながら、どこかじんわりと心が暖かくなる。 この漫才は第四の壁を破っている。第四の壁とは舞台と観客との間に存在する仮想的な壁のことだ。舞台上の世界と観客のいる世界は別世界だが、両者がコンタクトをとって地続きになることを第四の壁を破ると言う。 錦鯉の漫才はコントインすると長谷川氏が渡辺氏のツッコミに全く反応しなくなることから、両者は舞台上の役者と観客、テレビドラマの役者と視聴者のような別世界に存在しているものと思われる。 ところが、猿捕獲漫才ではクライマックスで突如渡辺氏が長谷川氏の世界に乱入。長谷川氏を抱きかかえ、丁重に床に横たえる。このことが、舞台