「当局の監視が厳しい。分かるだろ。外出は難しくなったので、自宅に来てくれ」 男性はそう短く言って電話を切った。番号表示にかけ直すと女性が出て、言った。「これは公衆電話です」 中国の民主活動家、劉暁波(リウ・シアオポー)氏のノーベル平和賞受賞決定を受け、中国で民主化を求める人々への当局の監視が厳しさを増している。「言論の自由」を求める公開書簡を出した中国共産党の元幹部ら23人の取りまとめを担った民主派雑誌編集者、鉄流氏(77)への接触も困難を極めた。 鉄氏が通う北京市内のスポーツセンターで自然な形で会おうとの話だった。が、直前にかかってきたのがこの電話だった。男性は「鉄さんの秘書」とだけ言った。盗聴を恐れているのは明らかだった。 指示通り、郊外の自宅に向かった。しかし、住宅地の門で警備員に止められてしまった。鉄氏に電話をかけたが、通じない。数分後、制服警察官2人が姿を現した。 「外