アメリカ契約法の重要概念であるconsideration(約因)は日本に対応する概念がないこともあって、日本の法律家には特にわかりにくい概念の一つである。もっとも、considerationは優れて法的な概念なので、判断に際して多少の難しさが伴うことはやむを得ない。 1. 約因の判断定式 具体的な判断に難しさが伴う場合があるものの、considerationの判断枠組みは定式化されている。そこで、まずはこの定式を説明するところから始めたい。 「Considerationがある」とは、(i) 当事者Aが受け取る利益(benefit)と当事者Bが受ける不利益(detriment)の一方または双方があって、(ii) 当事者Bが受け取る利益(benefit)と当事者Aが受ける不利益(detriment)の一方または双方があって、(ii) これら(i)と(ii)が交換される約束がなされていること、を