・赤い人 最近はまっている作家 吉村昭。これも得意のドキュメンタリ小説。 明治14年、北海道の石狩川上流の未開の地に、重罪人や政治犯を収容する大規模な集治監(現在の刑務所)の設置を政府が決定した。そこは冬期は積雪で町との交通が閉ざされる極寒の地。建設には40名の屈強な囚人が選ばれて、到着まで何も知らされないまま、過酷な現場に投入された。 自らを監禁する牢屋の建設を命がけでやらされる囚人たち。人権を無視した厳しい労働と規則。満足な食料も衣服も与えられず、冬期になると極寒による凍傷で手足をなくすもの、栄養不足で死ぬものが続出する。当然のことながら、囚人たちは殺気立ち、看守を殺傷したり、脱獄を試みるものも現われる。 当時の囚人に人権などなかった。不可能な逃亡の末に捕まれば、厳しい制裁が加えられ、その後も鉄の重りを足につけられた。抵抗すればその場で切り刻まれて、晒しものにされた。実は看守たちも必死