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ブックマーク / booklog.kinokuniya.co.jp (7)

  • 『告白』町田康(中公文庫) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「夢幻的人生」 書店で厚いを見ると惹かれてしまう。狂いの人間の悪い癖だ。厚いだと楽しみが長く続くのが嬉しいのである。薄いと、会席料理の一部に時々現れるお寿司のように、べてしまうのが(読んでしまうのが)もったいなく感じて、手を出すのが惜しくなってしまう。貧乏性だろうか? 町田康の『告白』は、文庫だが800ページを超える長編である。だが楽しみはそれほど長くは続かなかった。面白くて一気に読まされてしまうのである。明治26年に実際に起きた「河内十人斬り」事件を元にした創作だ。主人公の城戸熊太郎は貧乏百姓の子だが、幼い時から何でも熟考する癖があり、しかもそれが哲学的妄想の域に達している。 子供同士の小競り合いでも、深く考え込む。弱い自分が強く見えるのは、大楠公流の奇知・奇略によってである。何故そうするのか。忠ではない。人を殴るのが気持ちよいのか、違う。では義だろうか・

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  • 『I’m sorry, mama.』桐野夏生(集英社文庫) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「「唐突」な恐怖」 今夏一時帰国したときにお誘いを受けて、紀伊國屋サザンシアターで、福岡伸一と斉藤環の対談を聞く機会があった。どちらも旬で活躍している人達なので、大変に興味深かったのだが、その中で斉藤環が桐野夏生を高く評価しているのに気づいた。名前は知っていたが、彼女の作品は今まで読んだことはなかったので、今回手にとってみた。 『リアルワールド』と『I’m sorry, mama.』の2冊を読んだが、後者を紹介したい。アイ子という、とんでもない悪女の物語である。桐野夏生の作品の特色は「唐突さ」だ。特に最初は全く予期しない出来事が起こる。冒頭に登場する保育士の美佐江と、彼女が担当する園児であった稔が、25歳違いにも拘らず結婚しているのは、珍しいことであれ唐突ではない。 しかし、彼らが結婚二十周年記念に焼肉屋で事をし、そこで働いているアイ子に偶然出会う。アイ子は美佐江の

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  • ジャーナリスト・石井政之の書評ブログ : 『転身力』小川仁志(海竜社)

    →紀伊國屋書店で購入 「山口県に面白い哲学者がいる!」 それまでの生き方から、がらりと変身した人に興味があります。 「人生でひとつだけのことに専心して、そのことによって生活ができ、家庭を養うことができる。それが幸福である」 その価値観が日の高度成長を支えてきたような気がします。これは職人の価値観であり、人生観でしょう。長い歳月をかけて師匠から教えられる職人の技が尊重される世界では、人生でひとつだけのことに専心する人が高く評価されるのです。その職人の技によって日は豊かになりました。 しかし、いまはそういう職人の価値観が崩れている時代。一生をかけて体得した技、知恵、価値観が、その人の生活・収入に直結しないことが増えています。情報革命が暗黙知だった仕事を可視化して、交換可能にしていったためです。そしてその交換可能領域は増え続けています。 そんな時代ですから、すべての職業人は、自分の職業に誇り

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  • 『21世紀の国富論』原丈人(平凡社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

  • 『あめふらし』長野まゆみ(文春文庫) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

  • 『子どもの貧困』阿部彩(岩波書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「子どもの貧困問題は、まだ市民権を得ていなかった」 格差社会についての文献を読み継いできましたが、子どもの経済格差については知りませんでした。そのような情報が少なかったからです。いえ、そんなことはないでしょう。情報があったとしても、それを深く考えてこなかった。子どもの問題は、語られつくしている「はず」なのだから、情報も専門家も多くいて、それなりに問題解決のために前進しているのだろう、となんとなく思っていたからです。 書は、その思いこみを打ち砕きました。読了して、子どものいるすべての人に読んで欲しいと心から思いました。 人間として「許すべきではない生活水準=貧困状態」で生活する子どもたち、は語られてこなかった。 著者の阿部彩氏は、2008年5月に『週刊東洋経済』が「子ども格差」と題する特集を組んだことに触れて、「とうとう「子ども」と「格差」が同じ土俵でマスメディアにて

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  • 『変身-カフカ・コレクション』 フランツ・カフカ[著] 池内紀[訳] (白水Uブックス) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「カフカ、『変身』に見られる家族の自立」 夏休みといえば宿題、宿題といえば感想文だが、久しぶりに手に取った『変身』は多様な読み方ができる稀有な小説であった。 『変身』は、高校時代に読んだきりだから、内容も漠然としか覚えていなかったが、「目が覚めたら虫に変わっていた」とは、突然、理由もわからず発症していまうALS患者の境遇と酷似している。だから身近な神経難病者のストーリーとして、『変身』を読むこともできなくはない。しかし、それはやめておこう。ここには、家族の変容も描かれている。たとえば93ページ。介護してきた妹の堪忍袋の緒が切れてしまう。 「お父さん、お母さん」ザムザの妹が口をひらいた。ここからストーリーは急転直下の勢いで終局に転じていく。たたみかけるような会話。それまでおとなしく兄の運命を受け入れていたはずの妹が最初に口をひらいた。それを聞いたザムザは心臓に楔を打ち込

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