◇『仮面の女と愛の輪廻(りんね)』 (清流出版・2520円) ◇視線の蕩尽 薫り高いアンソロジー 虫明(むしあけ)亜呂無は、これまで主としてスポーツ評論や、スポーツに題材をとった小説の優れた書き手として知られてきた。一九九一年、没後間もない時期に、その代表的な作品群から『虫明亜呂無の本』(筑摩書房)が三巻本で編まれているが、これは当時なかなか入手できなくなっていた主要作品をまとめたもので、一九七〇年代後半から八〇年代にかけての新聞・雑誌への寄稿までは、残念ながらまかなう余裕がなかった。本書はその穴を埋める企画で、同趣旨の前著、『女の足指と電話機 回想の女優たち』につづく、虫明亜呂無の仕事をより広く知らしめるアンソロジーの、第二弾となる。 映画から演劇、文学、音楽に及ぶ幅広い時の話題を、けっして知識をひけらかすことなく、平明な言葉を使って、しかも深い余韻を残す「文章」を彼は遺(のこ)した。亜