表現の自由が今、脅かされつつある。 そう書いて、ふと立ち止まる。 表現の自由の危機について、周囲の人たちに話しかけて、どれだけの人が敏感に反応してくれるだろうか? 僕らの危機感は、迫りくる現実に追いついているだろうか? 言論の自由をおびやかす制約の線は、日頃、目に見える形で存在しているわけではない。目に見えない制止線が張り巡らされ、囲い込まれ、その囲い込んだ領域が次第にせばめられてきている、と僕らは感じている。また、そう感じとることで、僕らは「空気」を読んでしまい、自己規制を強め、隣人にもそれを知らず知らずに押しつけていってしまう。 自縄自縛である。 その「見えない制止線」が可視化される出来事が起きた。 今年2月16日、東京都美術館で開かれた「現代日本彫刻作家展」で、彫刻家の中垣克久氏の作品が「政治的な宣伝になりかねない」として、美術館側が作品の撤去を求めるという「事件」が起きた。中垣氏と
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