『嫉妬/事件』アニー・エルノー 堀茂樹・菊地よしみ/訳 早川書房[ハヤカワepi文庫] 2022.11.20読了 アニー・エルノーさんがノーベル文学賞を受賞された時には、すでにこの作品の文庫化が決まっていたようで、早川書房さんは先見の明があるなと感心していた。この本には『嫉妬』と『事件』の2作の中編が収められている。文学的な意味合いでは『嫉妬』のほうが優れているように思うが、強烈な存在感を放つのは『事件』のほうだ。 『嫉妬』 嫉妬は、人間が持つ感情の中で一番といってもいいほど醜くて嫌な感情だと思う。つい最近まで付き合っていた男性に新しい彼女ができ、一緒に住むことになったという。別れたはずなのに、嫉妬心にかられて相手の女性のことを知りたくなり生きる目的はそれだけになる。完全に別れてはいない、割り切れていないから、この嫉妬は生まれてしまうのだろう。 しかし、この作品における「嫉妬」は、私たちが
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