何度も行った水族館でいちばん記憶に残っている日の、お話。 たいやきくんは泳いどらんけど? 水族館のわりと近くに住んでいる。子供が小さい頃は超割安な「年間パスポート」を使ってよく遊びに行っていた。 入場口を入るとすぐに巨大な水槽が目に飛び込んでくる。子供が水槽へ走る。僕はそれを追っかける。水槽の前で子供と手をつなぎ、何千匹、何万匹という色とりどりのお魚たちが優雅に、あるいは勢いよく泳いでるのを眺める。自然と小さな笑みになる。 そんなとき、僕らに続いてやってきた野球帽を被ったおっさんが隣りでつぶやいた。 「うまそうだな」 うちの子がおっさんをチラ見する。僕は「おっ、見てみ、亀さんも来たよ」と言って子供の注意を水槽に戻す。 おっさんがどんな感想を吐こうが自由だ。しかしながら、夢とロマンあふれるこの場所にはもっとふさわしい言葉があるのではなかろうか。タイなのか、マグロなのか、アジ、イワシ、サンマか