ブックマーク / bakhtin19880823.hatenadiary.jp (31)

  • 【愛の◯◯】家庭教師は多ければ多いほうが…… - 音楽と本、それからそれから……。

    普通の時間に起きて、筋トレをした。 ――この調子なら、そろそろ、お外にランニングに出ていけるかもしれない。 今週末あたり――お邸(やしき)の近所を走ってみようかしら。 × × × シャワーを浴びた。 アツマくんとあすかちゃんが作っておいてくれた朝ごはんをべた。 当然の流れで、後のホットコーヒーを飲む。 ……わたし専用のマグカップを両手で持ちながら、考える。 ……利比古のことを、だ。 今月は、利比古の通う桐原高校で、学校祭が催される。 学校祭で盛り上がるのはいいんだけど、もう高3の秋。 受験シーズンも、到来しているのだ。 『ここらへんの大学を受けたい』と、直接言ってきたことはある。 その後、第一志望校が固まったかどうかは、知らない。 わたしがわたしのことで精一杯だったから。 不調で、余裕がなくて、弟のことまで気が回らなかった。 「姉なのに……ね。」 マグカップを両手で持ち上げて、ひとり呟

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  • 【愛の◯◯】わたしの手は魔法の手 - 音楽と本、それからそれから……。

    調子がイマイチな愛ちゃんをいたわってあげるために、お邸(やしき)を訪ねに行った。 「ごめんなさいね愛ちゃん。少し遅刻してしまったわ」 「全然いいんだよ、アカちゃん」 今は、愛ちゃんのお部屋に。 さやかちゃんも来ている。 「時間はできるだけ守りたいと思ってるんだけれど……きょうは立て込んでしまってて」 「いいのいいの。アカちゃんたぶん、わたしとは桁が違うほど忙しいんだろうから」 わたしを慮(おもんばか)ってくれる愛ちゃん。 「しかもきょうは、日曜なんだしね」 たしかに、愛ちゃんの言う通り……なんだけど、 「次に来るときは、ちゃんと時間を守るわ。約束するわ」 と、わたしは言うのである。 「アカちゃんは…強いね。それでいて、真面目」 「…そんなことないわよ。案外、ズボラよ」 「ほんとう~~??」 苦笑いしながら言う愛ちゃん…。 「ま、ときにはズボラになることも大事なのかもね、アカ子は」 そう言っ

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  • 【愛の◯◯】メタ的トークと澁澤龍彦 - 音楽と本、それからそれから……。

    「お兄ちゃん」 「なんだー、あすか?」 「今週、わたしたち、空気じゃない??」 「く……空気って、なんぞ」 「影が薄いよね今週。わたしたち兄妹」 「それは……ブログ的な意味で、か」 「うん」 「……」 「どしたの、お兄ちゃん」 「……いや、メタ的な発言は、ほどほどがいいんじゃなかろうか、と思って」 「いーじゃん、ちょっとぐらい。メタな方向に口が滑ったって」 「……」 「まー、いっか。少しぐらい、戸部兄妹の影が薄くたって。 今月の主役は――利比古くんだから。たぶん」 「しゅ、主役!?」 「主役。」 「利比古が主役であるという、根拠は……」 「お兄ちゃんもわかってないねー」 「ぬ」 「利比古くんの高校、今月末に学校祭なんだよ!?」 「あ、あー、そうだったな。たしかに」 「過去2年ブログ内でいっさい描写されなかったのが不可解だけど」 「……またメタ発言かいな」 「しょうがないでしょ」 × × ×

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  • 【愛の◯◯】姉の超絶技巧 そして弟の「超絶技巧」 - 音楽と本、それからそれから……。

    「はい。今週も1週間、お疲れ様でした。残り半日の授業、がんばっていきまっしょい! ですねー。 というわけで、金曜日の『ランチタイムメガミックス(仮)』のお時間です。 パーソナリティはもちろん、わたくし羽田利比古です。 さて。 芸術の秋、スポーツの秋、欲の秋、読書の秋……と、いろんな『◯◯の』が付くこの季節……なんですが。 きょうは、なんと!! 秋番記念の、スペシャルゲストをお呼びしているんです!!」 「……羽田くん。秋番記念って、なんですか?? 得体の知れない表現は、あまり……」 「まーまー。とりあえず自己紹介しちゃってよ、猪熊さん」 「……。 どうも、リスナーの皆様。 臨時ゲストの、猪熊亜弥と申します。 放送部です。」 「――ただの放送部員じゃないでしょ? 猪熊さんは」 「そうですね。 放送部の部長、という役職に、ぶら下がっている感じです」 「ぶら下がってるって」 「そういう苦笑い

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  • 【愛の◯◯】学祭(ガクサイ)!! - 音楽と本、それからそれから……。

    「いよいよ、学祭(がくさい)シーズンだねえ」 小路さんが言う。 「楽しみだよね!? …ねえ!? 羽田くん」 元気に言いつつ、迫ってくる小路さん…。 「…もちろん楽しみさ。今の時点で、きみほどお祭り気分にはなってないけど…ね」 「わたし、そんなにテンション高い!?」 自覚がないのか…。 やれやれだ。 相変わらず……やれやれだ。 「とりあえず、とんがりコーン、べよっか」 言うと同時に、お皿にとんがりコーンを放流する小路さん。 「あいにく、あっさり塩味しか無かったけど、我慢してね」 フレーバーにこだわりでもあるんだろうか。 「絶対に、焼きとうもろこし味のほうが美味しいんだけど…」 あっ、やっぱりあったんだ、こだわり。 「品薄なのかなあ。…羽田くんだって、焼きとうもろこし味のほうしか、愛せないでしょ!?」 ……なんなんだ、その言い回しは。 「次は、ちゃーんと焼きとうもろこし味のとんがりコーン、持

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  • 【愛の◯◯】母さんからわたしへ、わたしからあんたへ、とびっきりの……優しさを。 - 音楽と本、それからそれから……。

    火曜の夜。 「さやかってば……あなたがわたしのお腹で遊んでたりしたせいで、お昼寝時間が短くなっちゃったじゃないの」 「ごめん」 「……くすぐったかったんだからね?」 「ごめんてば」 愛はパジャマ姿。 ベッドを椅子代わりにしている。 …かわいいパジャマ姿な愛は、軽く溜め息をついてから、 「わたしをリラックスさせてあげようって意図は、わからないでもないけど」 「やり過ぎだったかー」 「くすぐったいだけだった」 「アハハ」 「…もうちょっと、わきまえて。いろいろ」 うなずくけど、敢えてわたしはイジワルに、 「……もし、アツマさんが同じようにしてきたら、どうなってた?」 愛の顔面がほんのりと赤くなっていく。 ぶんぶんっ!! と首を横に振って、 「そもそも彼は、昼間のさやかみたいなことは、しないからっ」 と突っぱね。 「もっとフェアなんだからね、彼は」 往年のツンデレ美少女キャラみたいな口調になりつ

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  • 【愛の◯◯】手を置く場所がいけなかったのか、お昼寝チャレンジ失敗寸前 - 音楽と本、それからそれから……。

    部屋をノックする。 少し経ってから、ゆっくりとドアが開き、愛が姿を現した。 「愛」 「…」 「おはよう」 「……」 「こらこら、挨拶しなさいって」 「……。 おはよう。さやか」 よしよし。 エラい。 × × × 「おはよう」を交わしたけど、もう昼過ぎだ。 ま、べつにいいか、そんなことは。 ミニテーブルに右肘を突いて、 「講義に出席してみようとしたんだって? ずいぶん頑張ったんだねえ」 とホメてみる。 でも愛は、 「ぜんぜん頑張ってないわよ……。」 と弱く言って、 「結局、最後まで講義は受けられなかったし。失敗よ、カンペキに」 と、真下を向いてしまう。 良くないなー。 「――愛。」 わたしは、優しく呼びかけてみる。 「えっ、どうしたの? さやか」 と愛。 …わたしの優しさに戸惑わなくたって。 「横になったほうが、ぜったい楽じゃない? 気を遣わなくたっていいから。だって、あんたの部屋なんだもの

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  • 【愛の◯◯】どうしようもないみたいな振替休日 - 音楽と本、それからそれから……。

    会津くんとギクシャクしたまま、文化祭を終えてしまった。 せっかくの2日制の文化祭だったのにイマイチ楽しめなかったのは、会津くんとギクシャクしたままだったから、なんだろうか。 文化祭を取材する仕事もあった。 わたしは、会津くんに同行して取材するのを避けたくて……2日間ずっと、単独行動で取材をしていた。 ……ヒナちゃんは。 ヒナちゃんは、わたしと彼の「事情」について、なにかを感づいているのかもしれない。 ヒナちゃんだって、そんなに鈍感なわけじゃないんだから。 × × × とにもかくにも文化祭は終わってしまった。 月曜日。振替休日がやって来てしまった。 まさに、「あとの祭り」……。 × × × なにもすることが無い。 近所の公立図書館から借りたを読むモチベーションも無い。返却期限が迫ってるのに。 音楽も元々そんなに聴かないし、映画もアニメもドラマもそれほど観ないし。 月曜の昼間だから、地上波テ

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  • 【愛の◯◯】それぞれの彼氏彼女におけるLINEに対するスタンスの相違 - 音楽と本、それからそれから……。

    土曜日。 母校の文化祭に来た。 スポーツ新聞部の面々に会った。 ソラちゃん・ヒナちゃん・会津くんの2年生トリオ、1年生のときよりも大人びて見えた。 成長が垣間見られて嬉しい。 加賀くんは、変わりがなかった。 『まるで成長していない……』っていうわけでは、なかったんだけどね。 いくつになっても加賀くんは加賀くんなんだな。 それから、1年生部員の宮なつきちゃんと初めて対面したんだけど、とっても背が高い女の子だった。 会津くんはもう少し彼女より高いんだけど…加賀くんは確実に、彼女よりは低かったな。 × × × 『がんばれ加賀くん…』って、呟いてみたり、みなかったり。 ――さて、とあるクラスの出し物の喫茶店を出て、ぶらぶらと校内を散策していた。 そしたら、とあるハンサムボーイが手持ち無沙汰そうに立っているのが、眼についた。 間違いない。 あれは、わたしと同期の濱野くんだ。 × × × 「おーい、

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  • 【愛の◯◯】9月まとめのランチタイムメガミックス(仮) - 音楽と本、それからそれから……。

    「はい! きょうも、やっていきましょーかねぇ!! ランチタイムぅ~、メガミックスぅ~、カッコカリ!!! …ハイテンション過ぎた? ハイテンション過ぎましたかねえ!? ま、いいや。 いつも通り、羽田利比古がパーソナリティでお送りいたします。 この番組のスポンサーは……特にありません。 もとい!! 9月も、きょうで終わりですよね!? 短かったような、長かったような! 台風も来たし、急に涼しくなったりもした! いろいろあったよね、9月!! ――テンション高過ぎでしょうか? ゆるして。 ……えー、さっそく、リクエスト曲を流してみようと思います。 とある先生からのリクエスト。 きょうのオープニングナンバーは……、 くるりで、『魔法のじゅうたん』」 × × × 「はい、くるりの『魔法のじゅうたん』、お聴きいただきました。 いい曲ですねー。 …うん。いい曲です。 さて、引き続いては、お馴染みのお便り紹介

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  • 【愛の◯◯】部長の優しさを、受け止めて。 - 音楽と本、それからそれから……。

    取材を終えて、囲碁部の部室から出てきた。 「加賀部長」 「なんだ? 宮」 「部長って、将棋オンリーじゃなかったんですね」 「な…どういうこった」 「けっこういい勝負してたじゃないですか、囲碁部の人と」 取材の成り行きで、加賀部長が囲碁部の人と対局することになったのである。 もちろん対局とは、囲碁の対局。 将棋が特技である加賀部長はアウェーだった。 でも。 部長、かなり…囲碁部相手に、い下がっていて。 「…結局は負けでしたけど、勝ちに等しい負けだったってわたしは思いましたよ?」 部長は少し眼を逸らす。 恥ずかしがらなくたって。 「……しょせん、置き碁だったんだし。九子(きゅうし)もハンデもらってたんだし」 そう言って部長は謙遜する。 「それでも、すごい戦いぶりでしたよ」 そう言ってわたしはホメ立てる。 すると、クルッと部長は背中を向けて、 「行くぞ……宮」 と、歩き出す。 部長がどこま

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  • 【愛の◯◯】そんな挫折ぐらい、リカバリーしてやんよ。 - 音楽と本、それからそれから……。

    愛がヘロヘロになって帰ってきた。 リビングのソファで、グッタリ。 「――へろへろちゃん状態だな、完璧に」 「……だれがどう見ても、そうよね」 「ま、詳しいことは、あとで聴いてやるとして」 「……」 「もうすぐ夕飯、できるからさ。 あったかいものでもって、HPとMP、回復させろや」 × × × 19時を過ぎている。 愛の部屋に、おれと愛。 「コーンスープ、美味しかったわ。作ったの、あすかちゃん?」 「あすかが作った。母さん直伝の味だ」 「どうりで…」 あすか作のコーンスープをホメたものの、愛の顔色はピリッとしていない。 「きょうの夕飯、あすかとおれの共同制作だったんだけどさ」 「…うん」 「おれの作ったオカズはどうだっただろうか」 「……」 ……なんか言ってくれてもいいだろっ。 『美味しくなかった』って言ったって、別にいいんだぜ!? 首をふるふる、と横に振る愛。 それから、 「ごめんなさい

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  • 【愛の◯◯】90分間に挑みたくて - 音楽と本、それからそれから……。

    月曜日。 新しい週のはじまり。 そしてきょうから、わたしの大学の後期も始まる。 始まってしまう。 前期の途中から、不登校状態になってしまっているわたし。 無理しない。 回復を待つ。 そのスタンスが、基。 なんだけど…。 × × × とりあえず新学期の初日は、邸(いえ)でダラダラゴロンと過ごした。 ――で、夜。 ダイニング・キッチンに行くと、やはり流(ながる)さんが、ノートPCのキーボードをカタカタと打っていた。 ゆっくりと歩み寄り、 「がんばってますね」 と声をかける。 わたしに振り向いて、 「愛ちゃんかぁ」 と言いつつ、ほっぺたをポリポリと掻く。 そんなに恥ずかしがらなくても。 「――もっと堂々としたって、いいじゃないですか」 「えっ?」 「せっかく、文芸を創作してるんだから」 「…んーっ、でもまだまだ、他人に見せられるような作品にはなってないし」 「そんなこと言わないっ」 『めっ!』

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  • 【愛の◯◯】ワッパーとYK - 音楽と本、それからそれから……。

    あすかさんとバー◯ーキングに来ている。 「あすかさん、好きなの……? ◯ーガーキング」 訊くわたし。 「好きだよ。好きだし――それに、」 「それに?」 「徳山さんはさ、フレッシュネスなバーガーショップの常連でしょ?」 「た、たしかにそうだけど……小野田さんとフレッシュネスなバーガーショップに足繁く通ってることが……どうかしたの」 「フレッシュネスばっかり行くんじゃなくて、新規開拓も必要じゃん? と思って。それで、バーキンをお昼ごはんの場所に指定したんだ」 新規開拓。 「わたしも、たまには新鮮味を出したいなー、と思って。最近、モスバーガーの一辺倒(いっぺんとう)だったし」 言うあすかさん。 「フレッシュネスでもモスでもない、第3の選択肢として……バーガー◯ングを」 「そーゆーことだよ、徳山さん。呑み込み早いねぇ」 黙って、じぶんの分のワッパーに視線を落とすわたし。 「――べたら?」 あすか

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  • 【愛の◯◯】ハッピーチキンライス - 音楽と本、それからそれから……。

    『誕生日、おめでとうございます!』 電話の向こうで、羽田愛ちゃんが、あたしの誕生日を祝ってくれている。 「ありがと~」 『あの、ルミナさん……』 「なあに」 『アツマくんも、ルミナさんの誕生日、ちゃんと憶えてて……』 「なんと!」 『それで彼、『ルミナさんの誕生日をおれも祝福します、って言っといてくれ』って、わたしに』 「律儀だね」 それにしても……。 「戸部くんの記憶力も侮れないな。あたしの誕生日、ちゃんと記憶してるなんて」 『そこらへんは案外きちんとしてるんです、彼』 「それは、愛ちゃんの実感?」 『はい』 ……微笑ましいんだから。 「愛ちゃん」 『…?』 「これからも、戸部くんに頼らなくちゃダメよ」 『…え?』 「頼りたいだけ頼らなきゃ」 『ルミナさん……?』 ゴメンね。 言いかたが、不器用で。 × × × 夕方5時を過ぎて、じぶんの家を飛び出し、ド近所のギンのお家(うち)まで歩いて

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  • 【愛の◯◯】ドーナツの袋をお腹で抱きしめて - 音楽と本、それからそれから……。

    「熱い試合だったね!!」 「……白熱してたな」 …ちょっと。 なに、そのリアクション。 「ホントに白熱したって思ってるの!? 会津くん」 「お、思ってるよ」 「疑わしい」 試合での選手のスマッシュのモノマネをして、 「スマッシュすごかったじゃん!! スマッシュ!!」 と叫ぶように言う。 だけど、 「日高。声が大きい。 まったく……運動公園まで来て、日高のうるささを注意することになるとは」 ムカッ。 × × × テニスの大会の取材で、運動公園に来ているんである。 …あたしと会津くんだけで、来ているんである。 ソラちゃんは、模試を受ける都合で、欠席。 × × × ――それにしても。 「会津くんだって、けっこう声は大きいよね??」 「…普通だと思うが?」 「誤魔化しても無駄だよ」 ……舌打ち、しないでよっ。 「なんで舌打ち!? ヒドいよ、ヒドい」 「…わからないのか」 「なにを」 「君の絶叫は…

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  • 【愛の◯◯】ふたりだけで取材に行ってきなよ - 音楽と本、それからそれから……。

    「…日高。君は、もっと慎みを持ったほうがいいと思う」 「??? 慎みって、なに。会津くん」 「きのう、濱野先輩にインタビューしていたが……。どう考えても君は、はしゃぎすぎていた」 「ええぇー」 「君は『反省』という漢字二文字を知らんのかっ」 「会津くん」 「……」 「そんなにコワい顔にならなくたって」 「……だれのせいだと思ってる!?」 「だからー、コワい顔、やめてよー」 イライラしながら、メガネの中心に指を当てる会津くん。 対するヒナちゃんは余裕。 『こういう対照性も、面白いな……』 こころの中で、わたしはわたし勝手(がって)に呟くのである。 「会津くん、部活はとっくに始まってるんだよ。手を動かそうよ」 ヒナちゃんが言った。 言ってから、椅子にちょこん、と座り、ノートPCをオープンする。 可愛い仕草だ。 そう。 …可愛い仕草。 …わたしには、真似のできない…そんな仕草。 彼女はカタカタと

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  • 【愛の◯◯】前代生徒会副会長にどうしても訊いておきたいこと - 音楽と本、それからそれから……。

    卒業生の濱野先輩に取材することになった。 OB訪問的な感じで母校にやって来た濱野先輩だったのだが、現在(いま)は、あたしたちスポーツ新聞部の活動教室に来てくれている。 これから、あたしがインタビュアーになる。 なぜか、会津くんも、インタビューに同席。 なんで会津くん居残りしてるんだろ。 あたしのこと、見張ってなきゃいけない…とでも、思ってるんだろーか?? 心外な……。 × × × とにもかくにも、インタビューの録音は開始されたのだった。 まずは、 「――生徒会室には、顔を出されてきたんですよね?」 と訊く。 濱野先輩は、前代の生徒会副会長。 「出してきたよ、顔。飯塚くん、貫禄があって、いかにも生徒会長キャラだなあ……って思った」 ハンサムな顔で、濱野先輩は、生徒会室に顔を出してきたことを語る。 「……丸山副会長は、どうでしたか?? 丸山先輩、昨年度は書記で、濱野先輩といっしょに生徒会を運営

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  • 【愛の◯◯】すみっコぐらしの生徒会副会長に喝!! - 音楽と本、それからそれから……。

    生徒会室に来ている。 文化祭の取材のためだ。 生徒会長の飯塚新男(いいづか あらお)先輩が、わたしの眼の前に。 生徒会長の椅子にドッカリと座っている飯塚先輩。 「――水谷さんも大変だね。スポーツのことだけでなく、文化祭のことまで取材しなきゃならんって」 飯塚先輩が言った。 「この学校には、スポーツ新聞部しかないので」 ことばを返すわたし。 「新聞部はないけど、スポーツ新聞部はある」 「…はい。実質、わたしたちスポーツ新聞部が、スポーツのこと以外を報道する役目も担っていて」 「大変だなあ~」 「でも…生徒会だって、大変でしょう? 特に今は、文化祭シーズンなんだし」 「そうだね。水谷さんの言う通りだ」 飯塚先輩は、机の上で両手の指を組んで、 「とりわけ、今年の文化祭は、2日制で催されることになった」 と言う。 そうなのだ。 10月1日と2日の、2日連続開催になったのである。 「2日制になった…

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  • 【愛の◯◯】あたしの仕事ぶりを見てなさいよ - 音楽と本、それからそれから……。

    祝日だからというわけではないけれど、お休みをいただいた。 調子を崩してしまったという羽田愛ちゃんのお見舞いをするために、お邸(やしき)を訪ねてみることにした。 × × × 戸部アツマくんが出迎えてくれる。 「わざわざすみません、ルミナさん」 恐縮そうに言う戸部くん。 「そんなに恐縮そうにしなくたって」 「でも……お仕事で忙しいのに」 「きょうはお休みだからぁ」 苦笑いであたしは言うが、 「……お疲れ様です」 と戸部くんは。 おいおい。 「どう見ても、疲れてそうなのは、戸部くんのほうじゃん」 「お、お、おれは、べつに……」 「戸部くん。だいじょーぶだから。きょうは、あたしがなんとかしたげるから」 「なんとかしたげるって……なにを……ですか??」 なにも言わず、戸部くんの真ん前に歩み寄る。 そして、戸部くんの左肩を、ポンポン、と軽く2度叩く。 びっくりする戸部くんに構わず、左肩に右手を乗っけ続

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