Facebook に 2021/ 8/31 に投稿した記事に手を加えたものです。 濱口竜介監督作『ドライブ・マイ・カー』。登場人物たちの心の旅路をみごとな映像とドラマ演出で、清冽な緊張感を保ちながら見せきる3時間。 賞をとることが納得できる立派な映画で、芸術を嗜む老若男女に「今日はいい映画を観たなあ」と思わせるであろう充実作。それでいて野心的な冒険作でもあり、作り手がいかなる映画になるかを発見していく、大胆なチャレンジ精神もある。芝居の稽古が進んでいくところなど、どのように撮り、どのように撮らなかったのだろう。 もちろんタイトル通りの「車の映画」としても、車内シーンの撮り方の繊細な変化、たびたび出てくるロングの俯瞰が醸す場面ごとの違いに惹きつけられる。例えば冒頭近くの成田空港に向かうロングには明らかなサスペンスがあり、その後の展開にうまくつながっていく。 村上春樹の原作は未読なので、どの程