国立新美術館でシュルレアリスム展。私はシュルレアリスム、というものがよくわからない。個々の作品の魅力が分からない、ということではない。また、定義や意義がわからない、というわけでもない。シュルレアリスムは日本で、この種の西欧の美術ムーブメントとしては特権的に広く知られている。今回も資料が展示されていたが、1934年にはシュルレアリストとして重要な詩人、エリュアールが紹介されていたのだし、関連の書籍は今にいたるまで多く出され、作品も愛好者は多い。ダリやマグリットは小学生でも知っていて、レオナルドやゴッホ並の認知度だ。「シュール」という言葉は美術あるいは文学の文脈を離れて、日常語として使われている。シュルレアリスムのような、はっきりしたベクトルを持って開始された概念的な「思想」が、ここまで日本の社会に浸透しているというのは、よく考えてみれば奇妙な話ではないだろうか。 展覧会としては良い内容である