フランスの批評家ロラン・バルトの有名な箴言に「人はつねに愛するものについて語りそこなう」というものがある。これは文学や映画、音楽に当てはまるだけではなく、当然、ビデオゲームにも当てはまるだろう。本作「VA-11 Hall-A」のインタビューやプレビューなどを私は既に数多く書いているが、それらの中で本作への愛を隠していない。そのため今回のレビューはどちらかと言えば、気乗りしないものだ。自分の好きな作品をより多くの人に伝えたいという気持ちが強い反面、恋は盲目となり、筋違いの評価を他人にも押し付けてしまうからだ。 とはいえ、今回、レビューにあたってPC版でプレイし直したが、良くも悪くも本作の個性を改めて思い知った。苦しい作業とはいえ、ある種のオトシマエとしてこのタイミングとしてレビューを書くのは悪くはない。過去を精算して未来に歩み出すのが、本作のひとつのテーマである以上、発売前から(勝手に)熱狂