昭和のパ・リーグには常識を超えた男が存在した。高校時代0本塁打の門田博光は身長170cmという小さな体で、プロ野球歴代3位の通算567本塁打を放った。その理由とは――。ロッテの主力として対戦し、ダイエーで2年間ともにプレーした水上善雄が“孤高のバットマン”の謎を解き明かす。※敬称略。名称や肩書きなどは当時 ◆◆◆ 「門田さんから『ホームランの打ち損ないがヒットなんよ』と聞きました。本気で、全打席スタンドに放り込もうとしていた」 試合を一瞬にして止めるホームランの魅力に取り憑かれた門田博光は、徹底的に自らの技術を追求した。それは同時に、常識を疑う作業でもあった。昔も今も、小柄な選手はホームラン打者になれないと考えられる。実際、通算300本塁打を放った45人の平均身長は180.1cm(日本野球機構オフィシャルサイトを参照して作成)。その中で、門田は最も低い170cmである。水上はこう実感してい