ジョブズの一挙手一投足に聴衆は熱狂し、拍手と歓声が上がる。ステージの上でiPhoneを操作して見せるジョブズは、まるで奇跡を行うイエスのようだ。彼はいま福音を届けにきたのだ。iPhoneという物質的なかたちあるものとして。 たしかにジョブズのプレゼンには伝道や布教のイメージがある。とくにがんを患ってからの彼には、ぼくたちのよく知っているイエスのイメージが重なる。イエスが神と人間のあいだを取り持ったように、ジョブズはテクノロジーと人間のあいだを取り持った。どうやって? テクノロジーをパーソナルなものにすることによって。そんなことはかつて誰も考えなかった。IBMに象徴されるテクノロジーは政府や企業のもので、パーソナルとは対極的なものだった。それは巨大で醜いものだった。 このビッグ・ブラザーに齧りかけのりんごが戦いを挑む。ジョブズにとって「パーソナル」とは何よりも小型化を意味した。コンピュータを
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