鹿島アントラーズのスカウト担当部長という役職柄、普段から選手の両親と連絡を取る機会は多い。ただ、デビュー戦が決まったときや移籍の報告など、専ら電話をかける側で、受けることはほとんどない。経験上、まれにかかってきたときは「あまり良い連絡ではない」と分かっていた。このときも覚悟して電話を取ったが、予想通りだった。 美津代さんは、切羽詰まった声で訴えかけてきた。 「椎本さん、どう思いますか? 今ドイツに行くべきですかね。いろいろな人に相談しましたが、ワールドカップ(W杯)後の方がいい、と言われることが多くて……。私もそう思うのですが、椎本さんの意見が聞きたくて電話をしました」 大迫は12月に入り、ドイツ・ブンデスリーガ2部の1860ミュンヘンから獲得オファーを受けていた。鹿島との契約は2年残っており、移籍には8000万円の違約金が発生する。1860ミュンヘンはその満額を支払う意思を示し、大迫