子供の頃とくに中学生だった時に出会った強烈な出来事をずっと引き摺っている、そんなことがある。今でも、氷河の中に閉じ込められたマンモスのように、心の底で眠っている。日常の怠惰な生活で、心は平らかに静かに外界を反射するけど、ふとしたきっかけで裂けた割れ目からマンモスが顔を覗かせる。そんな時心は大きく揺さぶられる。 「秒速5センチメートル」はまさにそういうテーマの映画です。 ただ、「秒速5センチメートル」は、他の思い出万歳な映画、一頃流行った懐古厨な映画やクレヨンしんちゃんの「オトナ帝国」とはちょっと違う。少なくとも、各所のレビューを読んでそういうイメージを持っていた私は、いい意味で裏切られた。 子供の頃の体験と、バブルや就職氷河期やらを経た末のリアルに生きる自分との間には、大きな解離がある。たぶんその隔絶っぷりは上の世代にはわからないと思う。情報やメディアにの氾濫によって経験に対する信頼がなく