『エチオピア語エノク書』は『第一エノク書』(1 Enoch)とも呼ばれています。現在全体としてまとまって残っているのは、エチオピア語のものだけですが、これのほかに、クムランの洞窟から発見されたヘブライ語の断片やアラム語の断片、またギリシア語やラテン語の断片があり、さらに、エチオピア語訳よりも短くまとまったスラブ語訳のもあります。現在では、『エチオピア語エノク書』は、その大部分がアラム語で書かれ、これがギリシア語訳を通してエチオピア語へと訳されたと考えられています〔村岡崇光訳『エチオピア語エノク書』〕。 〔注記〕引用した『第一エノク書』の訳文は、この岡村氏の版からのものと、Nikelsburg(3)に基づく私訳とがあります。また、岡村訳で用いられている「寝ずの番人」という訳語は、わたしなりに「見張りの天使」と訳し変えてあります。この点ご了承ください。 この書の内容からその成立過程をたどると