リビングのドアは、ほんの少しの隙間があれば、前脚を引っ掛けて内側から開けたり、押して外から入ってこれたりと自在に開け閉めができる。 そのくせ、2階のドアは仕様が逆というだけで、スキマがあっても自分で出入りできず、ドアの前で固まっている。 ジャンプしてドアノブを下げることができる(しかも後ろ脚で立ち上がり、前脚を合わせて拝むプチ芸すら持つ)同い年のソルと比較すると、圧倒的に分の悪い老猫、ルナ。箱入りバアサン。15才。 しかし彼女には類い稀なる能力がある。 この2年近く、ソルのおかげで彼女の食事は混乱を極めている。 ソルの病気と嗜好性の問題に巻き込まれ、何十種類ものフードに加えて手作りごはんまで、それはもうコロコロと食事内容が変わっている。 大概はソルのお残しの後始末。だからその日によって量もかなり変わる。 それにも関わらず、この2年の間というもの、月に一度計る彼女の体重はまったく変わらない。