深夜、台所で洗い物をしていると、シンクの隅にプラスチックの容器が転がっていた。拾い上げてみれば、側面が波打つように変形しており、どうやら「プッチンプリン」の容器らしい。恐らく、父が食べたものだろう。 先日65歳になり、めでたく高齢者の仲間入りを果たした父だが、年齢性別に関係なく、甘党はいつまでも甘党であり、無論、私にも遺伝子レベルで受け継がれている。 おじさんが夜中にこっそり「プッチンプリン」をお皿に「プッチン」する様子を想像し、「随分可愛らしい趣味だな」とニヤニヤしながら容器をスポンジで擦る。泡を洗い流そうと容器をひっくり返した瞬間、重大な事実が判明した。底面の「つまみ」が折られていないのである。 「つまみ」とは、世の中に溢れる数多のプリンの中で「プッチンプリン」だけが唯一所有する突起である。「プッチンプリン」の「プッチン」とは、この「つまみ」を折って皿にプリンを盛り付ける行為であり、「