ブックマーク / realsound.jp (10)

  • 話が飛ぶ人は体内に複数の時間が流れているーーADHD当事者の作家が描くエッセイ『あらゆることは今起こる』

    小学校1年生のときの教室。クラスメイトたちの当たり前を、自分だけがさっぱり理解できず、それを周囲には悟られないように平静を装いながら、内心はげしく動揺している。もしかしたら自分は気づかないうちに、どこかに存在する「並行世界」に迷い込んだのかもしれない。そう思うと、次第に怖くなってくる。 小説家・柴崎友香の『あらゆることは今起こる』は、そんな「小説の始まり」のようなエピソードから始まる。でも、これは「小説」ではない。2021年9月にADHD(「注意欠如多動症」)の診断を受けたという柴崎が書き下ろした、発達障害をめぐるエッセイだ。医学書院の「ケアをひらく」シリーズに収められているのだが、そのコンセプトにたがわず、ひじょうに平易な言葉遣いで、発達障害の特性を知ることができる。著者自身が発達障害についての考えを深める過程と並行して書かれていて、ADHDという言葉を耳にしたことはあっても、充分に考え

    話が飛ぶ人は体内に複数の時間が流れているーーADHD当事者の作家が描くエッセイ『あらゆることは今起こる』
  • “コミュニケーション禁止”の官製メタバース『ぷらっとば~す』に感じた3つの課題

    メタバースなのにユーザー同士のコミュニケーションが禁止されている」とX(旧Twitter)で大きな話題になっているのが、2024年5月の孤独・孤立対策強化月間のために内閣府が提供している特設メタバース『ぷらっとば~す』だ。 アバターの姿でコミュニケーションできるメタバースは孤独・孤立対策に有用そうだが、肝心のユーザー同士のコミュニケーションが禁止されていると聞くと、一見元も子もないように思える。 この記事では、ソーシャルVR等のメタバースで日常生活を送るヘビーユーザーの一人である筆者、VTuber・作家のバーチャル美少女ねむが『ぷらっとば~す』の体験の違和感、内閣府の狙い、利用して感じた3つの課題、そして仮想空間による孤独対策の可能性を整理して解説する。 『ぷらっとば~す』実際に体験してみた まず、実際に「ぷらっとば~す」を体験してみたところ、なかなかにショッキングな体験だったので順を追

    “コミュニケーション禁止”の官製メタバース『ぷらっとば~す』に感じた3つの課題
  • 元VTuberが“VTuberの失踪”を題材に小説を書いた理由 「インターネットは最後までやりきっていなくなる人の方が珍しい」

    VTuberが“VTuberの失踪”を題材に小説を書いた理由 「インターネットは最後までやりきっていなくなる人の方が珍しい」 早川書房より3月16日に発売された長編小説『鈴波アミを待っています』。 デビュー1周年の配信を待ちわびるファンの前から突如姿を消したVTuber・鈴波アミを中心に、彼女との思い出を辿る一人のファンの目線から描かれた物語だ。 2021年に「ジャンプ小説新人賞2020」のテーマ部門で金賞を受賞した同名の短編を全面リメイク。カバーイラストはしぐれうい、装幀は木緒なち、帯文には健屋花那とVTuber関係者で固めた布陣が目を引く。作者の塗田一帆自身も動画編集者・VTuberとして活動してきた過去を持つ。 当事者としてシーンを渡ってきた一方、徹底して無名のファンとしてのあり方を描いた作の作者には、現在のVTuberシーンはどのように見えているのか。(ゆがみん) この記事は小

    元VTuberが“VTuberの失踪”を題材に小説を書いた理由 「インターネットは最後までやりきっていなくなる人の方が珍しい」
  • アニメ『プラネテス』は一生の財産にもなりうる作品だ Eテレでの再放送開始に寄せて

    テレビアニメ『プラネテス』がNHK Eテレにて1月9日より、毎週日曜19時から再放送される。今でもアニメファンから絶賛の声が寄せられ、名作と呼び声高い作品が全国に再放送されることは、放送時から毎週楽しみにしていたファンである筆者としてもとても喜ばしい。今回は『プラネテス』が高く評価される理由について簡単に紹介していきたい。 『プラネテス』は、幸村誠による1999年から2004年にかけて連載された全4巻の同名の漫画作品が原作。2003年にテレビアニメとしてが放送された。監督は『スクライド』や、今作の後に『コードギアス 反逆のルルーシュ』や、また2022年には『ONE PIECE FILM RED』の監督を務めることも発表されている谷口悟朗が務めている。制作スタジオはガンダムなどのロボットアクションの印象も強いサンライズが務めており、ロボットバトルのない作品の制作を担当したことも話題を集めた

    アニメ『プラネテス』は一生の財産にもなりうる作品だ Eテレでの再放送開始に寄せて
  • 時代がキズナアイに追いついた 最新技術で“次元を超えるつながり”見せた2ndライブを振り返る

    メタバース」と呼ばれる、デジタル空間に用意した現実のミラーワールドを使ってバーチャル/リアルを横断する仕組みが現実味を帯びてきていることなどを追い風に、バーチャルタレント/バーチャルアーティストの分野は、さらなる広がりを見せている。中でも増加傾向にあるのが、リアルとバーチャルを組み合わせたXR、もしくはAR的な試みだ。 たとえば、人気ゲームタイトル『リーグ・オブ・レジェンド』からは、2018年に同作の世界大会で活動をはじめたバーチャルK-POPグループ「K/DA」や、その一部メンバーに新たな面々を加えた「True Damage」といったバーチャルグループが続々と誕生。どちらも現実のメンバーとバーチャルアバターがステージで共演するライブを行なっており、特にK/DAの2018年の登場時は、屋外の巨大会場のステージで現実のメンバー/ダンサーに違和感なく溶け込んでパフォーマンスするバーチャルキャ

    時代がキズナアイに追いついた 最新技術で“次元を超えるつながり”見せた2ndライブを振り返る
  • 空前の『鬼滅の刃』現象 映画興行は「なりふりかまわない」新基準へ

    今週ほどこのコラムが書きにくい週はない。全国各シネコンの公開初日の異常なまでのスクリーン割り多さが明らかになった先週半ば以降、ソーシャルメディア→ウェブメディア→テレビという順番で、あらゆるところで話題の中心となっている『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の爆発的ヒット。今さら数字を上げるのも躊躇われるが一応。10月16日に公開された同作の初日金曜日の動員は91万507人、興収は12億6872万4700円。土日2日間の動員は251万人、興収は33億5400万円。オープニング3日間の動員は342万493人、興収46億2311万7450円。いずれも2位以下を大きく引き離して、歴代1位となる空前の初動成績を打ち立てた。 この数字は、先週末2位に初登場した『夜明けを信じて。』の約25倍。今年公開された『コンフィデンスマンJP プリンセス編』、『映画ドラえもん のび太の新恐竜』、『事故物件 恐い間取り』

    空前の『鬼滅の刃』現象 映画興行は「なりふりかまわない」新基準へ
  • 実写とアニメの境を見直す杉本穂高の連載開始 第1回は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』評

    はじめに 連載を始める前に、この連載意図を記しておきたい。前置きとしてはやや長いかもしれないが、お付き合いただけると幸いだ。そんなのどうでもいいので、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』について読みたいという方は飛ばしてしまっても構わない(3ページ目から論です)。ただ、この前置きを読んでおくと、論の理解は深まるはずだ。(稿には、『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のネタバレが含まれます) 現代における「アニメーションならでは」という言葉のいびつさ アニメーション映画に関する文章で、「アニメーションならではの」という言い方を見かける機会は数多い。 アニメーションに対置される映画のジャンルは「実写」である。しかし、アニメーションならではの魅力は常々言われるのに、「実写ならではの魅力」が語られることはほとんどないのはなぜだろうか。 それは、「アニメーションならでは」という言葉を使う時

    実写とアニメの境を見直す杉本穂高の連載開始 第1回は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』評
  • 細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】

    細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】 年が明け2020年に突入。同時に2010年代という時代も終わりを迎えた。リアルサウンド映画部では、この10年間のアニメーション映画を振り返るために、レギュラー執筆陣より、アニメ評論家の藤津亮太氏、映画ライターの杉穂高氏、批評家・跡見学園女子大学文学部専任講師の渡邉大輔氏を迎えて、座談会を開催。 前編では、細田守や新海誠など、今や国民的作家となったアニメーション監督に注目。なお、後日公開予定の後編では、「ポスト宮崎駿」をめぐる議論の変容や女性作家の躍進、SNSとアニメーションの関係性について語り合っている。(編集部) 最初の地殻変動は2012年 ーー2014年に『アナと雪の女王』と2016年に『君の名は。』と、2010年代に入ってから、興行収入が200億を超える作品が出てくるように

    細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】
  • kz(livetune)が考える、VTuber文化ならではの魅力「僕らが10年かけたことを、わずか2年でやってる」

    kz(livetune)が考える、VTuber文化ならではの魅力「僕らが10年かけたことを、わずか2年でやってる」 2017年12月にある種のブレイクポイントを迎え、以降急速に発展してきたバーチャルYouTuber(VTuber)シーン。勢力図が次々に変化し、企業が積極的に介入するなど、何かと騒がしいこの界隈を、リアルサウンドテックでは様々な方向から取り上げてきた。 活動の場もYouTubeのみならず、さまざまなプラットフォームへと変化し、もはや“バーチャルタレント”と呼ぶべき存在となった。そんな彼ら彼女らについて、もう少し違った角度から掘り下げてみるべく、シーンを様々な視点から見ているクリエイター・文化人に話を聞く連載『Talk About Virtual Talent』がスタート。第一回は、J-POP・アニメシーンで幅広く活躍しつつ、キズナアイやYuNi、にじさんじなどに楽曲提供も行っ

    kz(livetune)が考える、VTuber文化ならではの魅力「僕らが10年かけたことを、わずか2年でやってる」
  • 牧野由依はなぜ復帰作で“声”をテーマにしたのか 本人が明かす、歌手活動休止の真相と次の一歩

    牧野由依が、3月21日にミニアルバム『WILL』をリリースした。同作は昨年7月、牧野がライブで喉を痛め、アーティスト活動を休止した期間を経てリリースされたもので、彼女にとっても非常に大きな意味を持つ作品に仕上がっている。 リアルサウンドでは今回、7月のライブの裏で何が起こっていたのかに迫りつつ、休止期間を経て掴んだ新たな表現や、「声」をテーマにしたミニアルバムを作った理由、岡真夜からの楽曲提供秘話、kz(livetune)提供曲「ハウリング」の重要性などについて、じっくりと話を聞いた。【※インタビュー最後にプレゼント情報あり】(編集部) 「自分に自信も魅力も感じなくなってしまっていた」 ーー今作に至るまでは色々トピックがありましたが、何より大きいのは7月の「Yui Makino Live『Reset&Happiness』」で喉を痛め、約半年間にわたり個人名義でのアーティスト活動を休止せざ

    牧野由依はなぜ復帰作で“声”をテーマにしたのか 本人が明かす、歌手活動休止の真相と次の一歩
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