男性医学の父と呼ばれた泌尿器科・熊本悦明。92歳で昨年、亡くなるまで現役で診療・研究を貫いた。残された私は、その直前まで父と共に進めていた『新・アダムとイヴの科学』をまとめた。その編集過程で、審議されていた「LGBT理解増進法」が施行された。正式名は「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」である。 父が生きていたら、「本当に〝理解〟を求めるなら、私たちが男と女の2つの性に分かれて生まれてくるのはなぜか、という医学的な話をするべきだ」と、吠えまくっていただろう。 「みにくいアヒルの子」という童話はご存じかと思う。アヒルの子の中に、1羽だけ毛色の違う子が混じっていた。その違いでいじめを受け、群れから離れさすらう。失意の果てに、最後にたどり着いた白鳥の群れで受け入れられたとき、その成長した姿は白鳥になっていた――という話。 これはまさに生物学的な違い
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