パブロ・ピカソの『盲人の朝食』という絵画がある。頬のこけた盲目の男性がテーブルにつき、パンと水だけを摂っている。部屋も男性もその服も、すべて青みがかった重い空気をまとう。この絵を見て、ある美術評論家は「青の時代に描かれた一作品」と解説し、ある小学生はそれを「ちょっと不気味だ、お隣の井上さんに似てる」と思うかもしれない。ある通りすがりの鑑賞者は例えば「画家が盲人を描くということは、絵画に伴う『見る』行為そのものを問い直す営みか」と考えるかもしれない。一つの絵(コンテント)が複数の解釈の糸口(コンテクスト)を纏っている。 illustration by Maki Ota (Takram) コンテクストには作者が意図的に込めたものと結果的に含まれるものの両方がある。青の絵をたくさん描いたのはピカソ自身なので「通りすがりの鑑賞者」の感想はある正統性をもった解釈「かも」しれない。比較的「意図的に仕組
![コンテント、コンテクスト|渡邉康太郎 / Takram @『コンテクストデザイン』青山ブックセンターにて発売中](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/7f63d0592217a6aaa5766dba97ee4a4b1919d7e5/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fassets.st-note.com%2Fproduction%2Fuploads%2Fimages%2F5471358%2Frectangle_large_1cd2f3ae80daed1ebf19ecaf644b97ae.jpg%3Ffit%3Dbounds%26quality%3D85%26width%3D1280)