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ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (5)

  • 雑で速いやつに対する説諭 - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。弊社ではそのために些末な打ち合わせもオンラインでおこなわれ、皆が慣れてきた今となってはリアルタイムの共同作業も気楽に実施されている。日は上司からの資料レビューであった。 上司:急ぎでイレギュラーな仕事やってもらっちゃってごめんね わたし:いえいえだいじょうぶです 上司:こういう差し込みの仕事、ガッてやってバッて出してくれるのほんと助かる わたし:いやあ、この程度でよろしければ 上司:あのね、できればこの程度じゃなくしてほしい 上司:あなたの仕事はいつもスピーディで対応も柔軟で素晴らしい。でも雑 わたし:あっそれが題ですね 上司:うん。赤字のところ見ておいて。とくに数字の誤字は致命的だからね。あと図の作りとレイアウト。せめて余白を左右対称にしてほしい。総じて雑 わたし:承知しました。赤線ありがとうございます。すごく直し

    雑で速いやつに対する説諭 - 傘をひらいて、空を
    sippo_des
    sippo_des 2021/06/03
    こういう関係になれたらいいけどさ
  • セフレですよ、不倫ですよ、ねえ、最低でしょ - 傘をひらいて、空を

    仕事の都合で別の業種の女性と幾度か会った。弊社の人間が、と彼女は言った。弊社の人間が幾人かマキノさんをお呼びしたいというので、飲み会にいらしてください。 私は出かけていった。私は知らない人にかこまれるのが嫌いではない。知らない人は意味のわからないことをするのでその意味を考えると少し楽しいし、「世の中にはいろいろな人がいる」と思うとなんだか安心する。たいていはその場かぎりだから気も楽だし。 彼らは声と身振りが大きく、話しぶりが流暢で、たいそう親しい者同士みたいな雰囲気を醸し出していた。私を連れてきた女性はあっというまにその場にすっぽりはまりこんだ。私は感心した。彼女は私とふたりのときには同僚たちに対していささかの冷淡さを感じさせる話しかたをしていた。 どちらがほんとうということもあるまい。さっとなじんで、ぱっと出る。そういうことができるのである。人に向ける顔にバリエーションがあるのだ。私は自

    セフレですよ、不倫ですよ、ねえ、最低でしょ - 傘をひらいて、空を
    sippo_des
    sippo_des 2019/09/18
    オホホ 匿名の増田さんとは違うんじゃ? 等しく愛を、人より多く欲しがる人間模様
  • 買母の量刑 - 傘をひらいて、空を

    ただいまあ、という。おかえり、と返ってくる。週に一度はあまり残業をせず、夕といってよい時間帯に帰ることにしている。月に何度かは作りたてのごはんを出したいという母と、疲れたら作りたてのごはんをべたいというわたしの思惑が一致して、なんとなし習慣になった。 母は台所に立って天ぷらを揚げている。わたしもいい年だし、母はもちろん老婆だから、そんなにたくさんの油ものはいらない。今日はわかさぎをもらって、だから揚げているのだった。ついでにさつまいもを切り、余った野菜でかき揚げもやって、いくらかを半切りにして冷凍しておく。簡単に麺で済ませるときに冷凍の揚げ物があると楽なのだ。緑もほしいわね、大葉の一枚くらいべられるでしょう。そんなふうに言いながら母は冷蔵庫を探り、天ぷらは結局結構な量になる。 わたしは寝室で着替え、デスクとして使っているカフェテーブルを居間に持ってくる。おかずをたくさん並べるときには

    買母の量刑 - 傘をひらいて、空を
  • あまい真綿 - 傘をひらいて、空を

    彼は仕事でへとへとに疲れて、彼女に連絡すると言ったことを忘れる。起きると彼女からメッセージが入っている。昨夜どうしたの?具合でも悪い?彼は返信する。だいじょうぶ。ごめんね。だいじょうぶならよかったと彼女は送りかえす。そのようなことが何度か起きる。あなたってほんとにいいかげんねと彼女は笑う。彼も笑う。 彼の仕事は先が読めないので、彼の予定はよく変わる。彼は彼女にそれを告げる。ごめんねごめんねと彼は言う。仕事なんだからしかたがないでしょと彼女は言う。笑って言う。そのうち彼もそう思う。仕事なんだからしかたがない。それからやがて、しかたないとも思わなくなる。予定が立たないならはじめから伝えなければいいのだ。それは当たり前のことで、だから意識なんかしない。 予定がつぶれても彼女に会いたいので、時間ができた日に彼は彼女にたずねる。今日行ってもいい?彼女は承諾する。彼は喜ぶ。やがて喜ばなくなる。それは当

    あまい真綿 - 傘をひらいて、空を
  • 砂糖菓子のお城の王さま - 傘をひらいて、空を

    愛に飢えているのですよと彼は言った。嘘だねと私はこたえた。あなたが飢えているのは愛じゃないよ、どう考えても。それから私たちはなんだか可笑しくて笑った。日常語でないと言われる語彙を、私はわりに平気で口に出すけれども、誰にでもというのではなくって、慣れが必要で、彼はあまりそういう語を口にしたことのない相手なのだった。 十年を過ごした恋人と泥沼の挙げ句に別れてから彼はずいぶんと野方図で、デートの相手を幾人もつくり、色も恋もない話し相手にすら性別が女であることを好むところがあった。以前は年に二度かそこいらしか会わない薄い友人だったのに、そんなわけで私にもなにかとお呼びがかかる。職場の近くで軽く飲みながら女たちに関する話を聞いてやるのが私はそんなに嫌いではなかった。なぜなら彼はみじめで可哀想で、いかにも不安定に見えたからだ。私は可哀想なものにえさを投げるような行為が好きだ。そういう自分を卑しいと思う

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