10月下旬、僕はハイエースを運転して、オートキャンプ場に向かっていた。 高速道路を降りて、現地のスーパーで買い出しをしたあと、のどかな田舎道を走る。 景色のいい場所に行って車中泊をするのが、近ごろの楽しみとなっていた。 よく晴れた日で、空は青く、日光を受けた山は鮮やかな緑色をしている。 その緑を分断するように延びる灰色の上を、心地いい速度で進んでいく。 信号機もほとんど見なくなり、田舎の風景に癒された僕は、すでに「来てよかった」と感じていた。 それを見たのは、小さな橋に差しかかったときだった。 橋の車道の端に、猿が倒れているのだ。 そのすぐそばには仲間の猿が一匹、呆然と立ち尽くしている。 車に轢かれてしまったのに違いなかった。 反射的に車を減速させていた僕は、二匹の猿から引き剥がした視線を前方に移した。 反対車線に停まっているライダーが目に留まる。彼はバイクにまたがったまま、倒れた猿を見つ
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