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ブックマーク / note.com/itakuratoshiyuki (2)

  • 倒れた猿|板倉俊之

    10月下旬、僕はハイエースを運転して、オートキャンプ場に向かっていた。 高速道路を降りて、現地のスーパーで買い出しをしたあと、のどかな田舎道を走る。 景色のいい場所に行って車中泊をするのが、近ごろの楽しみとなっていた。 よく晴れた日で、空は青く、日光を受けた山は鮮やかな緑色をしている。 その緑を分断するように延びる灰色の上を、心地いい速度で進んでいく。 信号機もほとんど見なくなり、田舎の風景に癒された僕は、すでに「来てよかった」と感じていた。 それを見たのは、小さな橋に差しかかったときだった。 橋の車道の端に、猿が倒れているのだ。 そのすぐそばには仲間の猿が一匹、呆然と立ち尽くしている。 車に轢かれてしまったのに違いなかった。 反射的に車を減速させていた僕は、二匹の猿から引き剥がした視線を前方に移した。 反対車線に停まっているライダーが目に留まる。彼はバイクにまたがったまま、倒れた猿を見つ

    倒れた猿|板倉俊之
  • 必要のない仕事|板倉俊之

    ローテーブルの前で片膝を立てて、僕はネタを考えていた。 無音にしたテレビ画面には、津波の映像や、悲しみに暮れる人々が映っている。 東日大震災から、数日が経った夜だった。 ゴールデンウィークに単独ライブを控えており、そのチケットはすでに発売されていた。 僕はその台を書かなくてはならなかったが、どうにも集中することができないのだった。 こんなときに、自分はいったい何をやっているんだ? いま「面白いこと」を考えるなど、許されるはずがないだろ——。 いっそテレビを消してしまえば、いくらか現実を忘れられるのかもしれないが、僕にはそうする勇気も持てなかった。 このまま当日を迎えたら、一番困るのは自分だ。何より、チケットを買ってくれた人たちにどんな言い訳をするつもりなんだ? そんなふうに自分に言い聞かせながら、目の前に広げられた大学ノートを睨んだ。そこに書かれたコント設定やセリフの断片を、頭の中で膨

    必要のない仕事|板倉俊之
    sippo_des
    sippo_des 2021/12/17
    必要とされたい必要としたいって口に出せないから、承認欲求だのしょーもない言葉に置き換わってるだけで、本当はこいうシンプルで、やりたいことをやる、続けるってことなんだろなー
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