1月。誰もがおめでたい正月気分の残る中、マネージャーは多忙な仕事を始める。会社を出て、新年の得意先回りに出かけるのだ。本年もよろしくお願いします。昨年はお世話になり、とくに某の件ではいろいろご迷惑もおかけしましたが、今年は気を引き締めて進めますので、是非またよろしくお願いいたします。営業部員も同行するが、品質トラブルで嫌みを言われるのは技術屋の方だ。いずれにせよこの不況の中、一社でも顧客を逃したら今期の目標達成はあり得ない。もっとも訪問先の2人に1人は、業界の新年会に出かけていて不在だが。それでも名刺を置いてくるのが大事な仕事だ。 2月。昨年から続いていた仕事が製作段階に入って火を吹いた。基本設計にミスがあったのだ。誰が設計書をチェックしたんだ! と叫びたい声をぐっと飲み込む。後ろ向きのことを言っても仕方がない。部下の責任はいずれ自分の責任だ。とにかく人を追加する算段を考えなければならない