こんばんは、貯金箱です。正確には前世で怪獣の形をした貯金箱でした。お金を食べる生物として寓話的にも唯物的にも適任かと思いましたので、食にまつわる思い出を、少し。 この業界では「喉元すぎれば半人前、口からこぼして一人前」といわれています。持ち主の三日坊主や途中解約などにより、お金に満たされて天寿を全うする例は多くないぞ、という戒めです。常に飢えた私たちは体内の空白に敏感で、あと何円でそれを埋められるか計算ばかりしていました。お互いを見張り、その食事内容に一喜一憂し、とても健やかとは言えなかったと思います。 稀に、高額紙幣を口にする機会もありました。あのゴワついた紙が口に押し込まれるとき、他の仲間を出し抜いた心地良さで口の端が歪み、秘めやかな興奮が心に渦を巻いたものです。一度その味を覚えると、少額の硬貨を口にすることは砂を噛むような苦行となりました。 実は私、あと数百円で完全に満ち足りるまでお