養老孟司 解剖学者/作家/昆虫研究家 現代人にとって、障害となる「壁」は、あなたの外にあるのではありません。実は、あなた自身が壁なのです。 あらゆる情報は、「しょせん済んでしまったこと」 なぜか。それは現代人が、未来を見ているつもりで、過去しか見ていないからです。 インターネットの発達で、現代人は飛躍的にたくさんの「情報」を手に入れることができるようになりました。こうした「情報」をたくさん集めて何に使うのかというと、「新しいこと」を生むためです。あるいは「未来」を予測して、失敗しないようにするためです。 けれども考えてみてください。 いくらたくさん「情報」を集めようと、それはすべて「過去の積み重ね」「済んでしまったこと」にすぎません。それだけを眺めていても、未来に起きることを見越したり、新しいことを発見したりすることはできないのです。 いま、流行の言葉に「危機管理」、英語でいうと「リスクマ